自律神経失調症

はじめに自律神経について整理しておきましょう。

まず神経とは、身体の中で色々な情報をやりとりする電気信号の通り道のことで、体性神経と自律神経に大きく分けられます。

体性神経は、意識的に行動するときと、五感から情報を仕入れるときに使われるもの。

自律神経は、寝ていても何をしていても、生きている間じゅう、一生働き続けている神経です。

脳から背骨の中を通って、内臓の一つ一つとつながり、血流や血圧、発汗、排泄、消化、吸収など、生きるための重要な働きをしています。

自律神経には身体を活動的にさせる交感神経と、リラックスさせる副交感神経の二種類があります。

自動車のアクセルとブレーキのように、交感神経と副交感神経がうまくバランスを取りながら、日中は元気に活動して、夜はぐっすり眠って回復するのが健康なときの状態です。

自律神経失調症というのは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、暴走してしまっている状態です。

日中の活動したい時に交感神経が働かないのは、高速道路に乗ったのにアクセルが効かずにスピードが出ないような危ない状態。

夜疲れて眠りたいのに目が冴えて眠れない、寝ても眠りが浅くて回復できないのは、高速道路からパーキングエリアに入ったのにブレーキが効かず、衝突しそうな状態です。

自律神経は同時に色々な体の状態をコントロールしているので、乱れてしまったときも、色々な症状が同時にでてきます。

これが、一言に自律神経失調症といっても、人によって現れる症状や程度がまちまちな理由です。

自律神経が乱れてしまう原因は、不規則な生活や過剰なストレス、運動不足など様々です。

何か一つのはっきりした原因があることもあれば、いくつかの小さな原因が積み重なっているケースも多く、特定が難しいことも多いです。

具体的な例では、自営業や医療、介護などシフト制の仕事で、休日や休憩時間がバラバラであること。海外出張が多いなど、長時間の移動や時差、気候や環境の変化がめまぐるしい仕事などがあります。

長期間にわたる持続的なストレスでいうと、受験勉強や就職活動、家族の介護や看病、責任重大な仕事、中間管理職、人間関係の問題など、これも様々です。

ある程度までの生活習慣の乱れやストレスに対しては、うまくバランスをとって、立て直すのが自律神経の持つ力ですが、その対応能力にも限界があります。

「これ以上は修正不能だから、原因を減らす対処をして欲しい。」という身体からのサインが、頭痛や肩こり、腰痛、冷え、不眠、動悸、息切れ、めまいなどの様々な症状なのです。

既に病院を受診されている場合も多いと思いますし、内科や整形外科、耳鼻科、皮膚科などではっきりした診断がつかず、薬を飲んでも改善しないので複数の診療科や病院を受診されているかもしれません。

自律神経失調症では、いくつもある症状をそれぞれ単独でみると、不規則な生活や過剰なストレスという本当の原因に気が付きにくくなってしまいます。

頭痛や腰痛、首の痛みなどを伝えれば、レントゲンやＭＲＩなど画像診断で異常がないと、湿布や痛み止めの処方になりがちですし、倦怠感や冷えなども、血液検査に異常がないと、漢方を処方されたり、心療内科や精神科の受診を勧められることもあります。

心療内科や精神科を勧められると、自分は心の病気なのかとショックを受ける方も多いですし、向精神薬や睡眠導入剤などを飲み始めると、軽減する症状もあれば、副作用に悩まされて、ますます悩みが複雑化してしまう場合もあります。

画像検査や血液検査で、治療が必要な内臓の病気や感染症などがないことを確かめるのは非常に大事なことですが、そのような病気がみつからないまま、処方される薬を服用しつつ通院を続けても、症状は一向によくならないなら、別の方法を試す価値は充分にあります。

病院の治療を受けても改善しない場合も、もう治らないのだとあきらめる必要はありません。

本当の原因である、自分の自律神経が対処しきれないほどのストレスや、不規則な生活をしていないかを丁寧にみつけていき、改善していけば、徐々に自律神経の働きは回復していくからです。

神経の伝達を正常化することで、体の持つ能力を最大限に発揮させることを専門とする施術法こそが、カイロプラクティックです。

首や腰などの背骨をボキッと動かすイメージを持たれることが多いですが、その手技では、背骨の中を通る運動神経、感覚神経の伝達を正常化させることで、腰痛、肩こり、頭痛、坐骨神経痛、手足のしびれ、神経麻痺など様々な症状を緩和しています。

背骨を手で動かす手技はカイロプラクティックのほんの一部で、他にももっとソフトな方法で、神経の伝達を正常化させる手技は多くあり、当然自律神経の調整も得意としています。

原因が過剰なストレスや生活習慣にあるので、カイロプラクティックの手技を受けるだけでなく、生活習慣と環境の見直しをすることは非常に重要です。

ですが、長い間不調に悩まされて弱っている状態のときに、生活を変えるエネルギーを出すのは至難の業です。

ですので、最初のうちはカイロプラクティックの手技を続けて受けて、少しずつ症状が楽になっていくのと同時進行で、経験のあるカイロプラクターに、無理なく習慣を変えていくプログラムを組んでサポートをしてもらうのがベストです。

自律神経のバランスを整えるためにはひとつのカギがあります。

それは「呼吸」です。

自分の意志でコントロールできない自律神経の働きの中で、唯一自分の意志でも参加できるのが呼吸だからです。

生まれた瞬間から亡くなる瞬間まで、誰に教えられるわけでもなくしている呼吸ですが、実は身体にとって最適な呼吸ができていない方が驚く程多いのです。

特に、自律神経失調症の症状がある方では、ほぼ100％の方に、呼吸の仕方を改善する余地があります。

ストレスの原因となる環境を変えられなくても、呼吸を改善することで、同じ出来事に対して受けるストレスを軽減することもできますし、回復を早めることもできてきます。

つまり、自律神経失調症の原因をなくすだけでなく、よりストレスに強い体作りをしていくという積極的な対処をしていけるのが、カイロプラクティックなのです。

あなたの体はダメでもおかしくもなく、対処をして欲しいというサインを正常に出してくれています。ぜひそのサインを受け止めて、一緒に改善していきましょう。